『そらいろ男爵』
ジル・ボム 文
ティエリー・デデュー 絵
中島さおり 訳
主婦の友社
100年ほど前の戦場が舞台の絵本――だれにも邪魔されることなく、ただただそらいろの飛行機から鳥を眺めるのが好きだった男爵。しだいに戦争への加担を余儀なくされます。
そんな男爵が最初に飛行機から落下させたのは砲弾ではなく、なんと分厚い百科事典でした。続いてトルストイの『戦争と平和』! なんとそれが敵の隊長を夢中にさせ戦いの命令はストップするのです。
それから次々に男爵はあらゆる本を戦場に落とします。そして最後に男爵が戦争を終わらせるために敵の陣地、味方の陣地に落としたものは何だったのでしょうか!?
地球を見渡せば、今なお悲しいことに戦争は絶えません。問題は複雑で一筋縄ではいかないけれど、その複雑さを超えたシンプルなメッセージが胸を打ちます。戦争が生む憎しみを思うと人間とはいったい何なのかと考えてしまいますが、それ以上に「人間には知恵がある」「私たちには言葉がある」と今一度、言葉の力を今一度信じてみたくなる1冊です。
第一次世界大戦開戦から100年目にあたる2014年にフランスで出版された本で、すぐれた児童書に送られる「サン=テクジュペリ賞」(絵本部門)を2014年に受賞された作品です。風刺画を思わせるようなウィットに富んだ絵も魅力的!