「僕も、今夜はここに泊まって、明日からの対策を考えよう」
「わかりました。オレもここに泊まらせてもらいます」
「では、僕たちも寝ようか、もう夜も遅いし。・・・んっ、おっ、アキラくん、すぐに家に連絡しろ。・・・僕としたことが、今ごろ気づくなんて・・・。高校生をこんな時間まで、」
「大丈夫です。オレ、1週間程、ひとりなので。母は海外に、祖父母は学生時代の集まりがあるついでに、秘湯巡りもしてくるそうですから」
オレたちが、こんな会話をしている間、猿神さんは、チャッピーの姿を捜し、家中を見て回っていたらしい。
「チャ、チャッピーが・・・」
台所に現れた猿神さんの顔から、生気がすっかり失われている。
「いないんだ。家中捜したが、いないんだ。チャッピーはどたどたとした足音が嫌いだから、気配を殺し、静かにそーっと捜してみたが、いないんだ。アキラ、黒岩、手分けして捜すのを手伝ってくれ」
大きな体が、瞬時にひと回りもふた回りも、縮んだように感じられる。
炎天下に置かれた雪だるまのように。
猫アンテナ狂想曲(10/15)
文・朝日千稀 絵・木ナコネコ