いい匂いが、する。
家に入ったオレ、じりじりと夜明けを待つうちに、眠ってしまったみたいだ。
匂いにつられ台所へいくと、
「ご飯が炊けたぞ。アキラくん、おにぎりを作ろう。腹が減っては戦はできぬ、だ」
セーターの腕をまくり上げる黒岩さんに、続いてオレも腕まくりする。
そして、気づいた。
「なぜ、こんなものが?」
右腕に、貼られている物を、
「絆創膏・・・ですよね?」と、指で示す。
「見てわからないのか?」と、猿神さん。
「見ればわかるだろう!」と、黒岩さん。
もちろん、オレだって、わかる。
だけど、ここで問題なのは、
「オレ自分で貼った覚えも、だれかに貼ってもらった覚えもないんですけど・・・」
ってことだ。
「もし、だれかが、貼ったのだとしたら・・・、この家で、意識を失っていた間としか考えられません」
「そうなのか? だとしたら、深刻な事態だ。とりあえず、はがしてみろよ、アキラくん」
「はい」
テープをはがし、赤く小さな痕が残された腕の内側を示す。
「黒岩さん、これって献血の痕、ですかね?」
「献血って・・・、正体もわからない輩に、血を捧げてどうする!」
「なるほど」
「それは採血の痕だな。注射器を使い、血を抜いた痕だ」
黒岩さんの言葉を聞いて、怖くなる。
オレの周りで、一体、なにが起きている?
いや、考えても、わからない。
身体に異常は感じないし、今は、とにかく、チャッピーを捜すことに集中しよう!