猫アンテナ狂想曲(11/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

いい匂いが、する。
家に入ったオレ、じりじりと夜明けを待つうちに、眠ってしまったみたいだ。
匂いにつられ台所へいくと、
「ご飯が炊けたぞ。アキラくん、おにぎりを作ろう。腹が減っては戦はできぬ、だ」
セーターの腕をまくり上げる黒岩さんに、続いてオレも腕まくりする。
そして、気づいた。

「なぜ、こんなものが?」
右腕に、貼られている物を、
「絆創膏・・・ですよね?」と、指で示す。
「見てわからないのか?」と、猿神さん。
「見ればわかるだろう!」と、黒岩さん。
もちろん、オレだって、わかる。
だけど、ここで問題なのは、
「オレ自分で貼った覚えも、だれかに貼ってもらった覚えもないんですけど・・・」
ってことだ。

「もし、だれかが、貼ったのだとしたら・・・、この家で、意識を失っていた間としか考えられません」
「そうなのか? だとしたら、深刻な事態だ。とりあえず、はがしてみろよ、アキラくん」
「はい」
テープをはがし、赤く小さな痕が残された腕の内側を示す。

「黒岩さん、これって献血の痕、ですかね?」
「献血って・・・、正体もわからない輩に、血を捧げてどうする!」
「なるほど」
「それは採血の痕だな。注射器を使い、血を抜いた痕だ」

黒岩さんの言葉を聞いて、怖くなる。
オレの周りで、一体、なにが起きている?
いや、考えても、わからない。
身体に異常は感じないし、今は、とにかく、チャッピーを捜すことに集中しよう!

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。