デカいおにぎりを前にして、口火を切った。
「昨夜の話、お願いします。中園さんが登録していた住所は空地だった、の続きです」
昨夜、黒岩さんは言いそびれ、オレたちは聞きそびれていた話のことだ。
「そうだった。実はな、担当者の話では、『捜し猫』コーナーの受付の締め切りは、掲載日の5日前なんだ。が、中園さんの申込みが受け付けられたのは、2日前。無理を通した分、掲載料も破格の金額が動いたらしい」
「はい」
「だが、そんなことは、猫好きならやるだろうな、と僕にも想像はつく。重要視することはないと思っていた」
「はい」
「しかし、ここで君たちの身に起きたことを聞き、当たり前だと思っていたことの裏に、なにかが隠されているように思えてきた」
黒岩さんは、おにぎりにかぶりつく。
「黒岩、隠されているって、なにがだ?」
「それは、まだ、わかりませんが、同僚に聞けば、なにか、わかるかもしれません。ですから、中園さんのことは、あっ、それと丹田さんのことも、僕が調べてみます」
「わるいな、黒岩。だが、おまえ、本業は?」
「先輩もおとなの発言、するんだ・・・。あっ、いえ、本業の心配はご無用です。僕、3日間、休暇を取っていますから。先輩には出張と言いましたが、じつは、僕、京ちゃんとデート・・・」
「く~ろ~い~わ~、おまえ、ワシに嘘を!」
「す、すみません、先輩。僕、きっちり調べさせてもらいますから」
「うん。そうか。頼む」
猿神さんが、頭を、下げた。