「よし、北へ!」
エンジン音を響かせ、キャロちゃんが行く。
市街地で曲がる道にさしかかるたび、
「もっと、早く指示を出せ!」
猿神さんにブツブツ言われ、
「オレだって、ぎりぎりにならないと、わからないんです! いつでも、サッと曲がれるように、心の準備をしておいてください!」
同じ答えを繰り返し、ようやく県道に出る。
「真っ直ぐです。しばらくは、直進で!」
飛び去る景色の中に現れた道路標識は、このまま進めば、勝川市だと告げている。
「しばらくって、どのくらいだ?」
「しばらくは、長くもないけど短くもない」
「って、どっちなんだ!」
「わかりません! あっ、猿神さん、そこ、左です」
「もっと早く指示を出せ!」
県道を左折し、広い河川沿いの道を行く。
川は、一級河川の九頭蛇川だ。
橋を渡り、さらに走ると、見えてきたのは、全面ガラス張りの大きな建物だった。
朝の光を浴びて、輝く姿は、水晶の塊のようで、とてもきれいだ。