王様になれなかったくま(1/4)

山おくの木の根元で、こげ茶色の小さな子ぐまがないています。
「お母さーん、どこ? おなかすいたよぉ」
お母さんとはぐれてしまったようです。
それを見た、さるの村長が言いました。
「あの子ぐまは、きっと大きく強くなる。育ててこの森の王様にしよう。いずれみんなを守ってくれるにちがいない」
ほかの動物たちもさんせいし、子ぐまに「チャロ」と名前をつけ、みんなで育てことにしました。
チャロはどんぐりや山ぶどうが大すきで、パクパク食べて、スヤスヤねむり、ノビノビ遊びました。
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山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。