王様になれなかったくま(1/4)

「ハチさん、ごめんね。ちょっと分けてくれよ。今度花のたねをまいておくからね」
チャロは、ハチのすからハチミツをとりだします。
「今日はすごくいいハチミツがとれた!」
トローリトローリと、黄金色のハチミツがつぼをみたしていきます。森の動物たちは、いつもチャロがとってくるハチミツを楽しみにしていました。
「このハチミツを食べると元気になるわ」
「なめると、のどのちょうしがよくなるね」
動物たちにとって、ハチミツは大切な薬でもあります。かぜだって、チャロのハチミツをなめるとすぐになおるのでした。

「ぼくが大きくなったら、もっとハチミツをとってきてあげるからね!」
そう言って、チャロは目をキラキラさせました。
みんなはチャロが大きくなって、えものをとったり、オオカミから守ってくれる日を心まちにしていました。

「ぼくは強い王様になって、みんなを守るんだ!」
チャロは、大きくなって、みんなからしたわれている自分のすがたをそうぞうしていました。その頭には、金色のかんむりがキラキラとかがやいているのでした。

山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。