王様になれなかったくま(3/4)

ズシーン、ズシーン

音とともに空気がゆれています。
チャロはゆうきを出して、おそるおそるふりかえりました。
すると、ま後ろに大きな大きなくまが立っていました。
「うわぁ! くまだぁ‼」
チャロは、ころがるようににげ出しました。大きなくまが何かさけんでいますが、こわくてふり向くこともできません。

チャロは、大急ぎで村長にほうこくしました。
わかいサルたちが、大きなくまの足あとをかくにんし、村は大さわぎになりました。
すぐに動物たちの代表が集まり、話し合いました。

「そんなに大きなくまじゃ、とてもたたかえないよ。引っこしてしまおうか」
リスがプルプルとふるえています。
「いや、ずっとくらしてきた森をはなれるなんてできないよ。行くところもないじゃないか」
ウサギはメソメソないています。

「ぼくらのキバなら、少しはたたかえるかもしれない」
イノシシは、石でキバをとぎはじめました。
「木の上から石をなげようか」
サルは石を手にして、ふりかざすまねをします。
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山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。