王様になれなかったくま(3/4)

「いや、それほど大きなくまでは、とてもたちうちできんだろう。どうしたものだろう」
村長がそう言うと、みんな下を向いてだまってしまいました。

「あのぉ」
チャロが小さく手をあげました。
「小さいけど、ぼくもくまだ。ぼくが話をしてみるよ」
「あいてはきょ大なくまだ。やめたほうがいいよ」
みんなはいっせいに止めますが、チャロの気もちはかわりません。

「大きなくまはこわいけど、みんなでくらした森をなくす方がこわいんだよ」
それを聞くと、みんなうなづくしかありませんでした。
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山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。