王様になれなかったくま(4/4)

「やっぱり、ぼくは強いくまにはなれないや」
チャロはハチミツをほおばりながら言いました。
「でも、チャロのおかげでロックと友だちになれた。おいしい魚も手に入るようになったじゃないか」
村長は、ロックの魚をほしています。
「そうだね、ぼくはこれからもハチミツをとってくるよ」
チャロは、口のまわりについたハチミツをペロペロとなめました。

「チャロ、お母さんが元気になったお礼よ」
カリンが、花のかんむりをチャロにわたしました。
「わあ、花のいいにおいがする! にあうかな?」
チャロは、花のかんむりをかぶってわらいました。
「よくにあってるよ」
クルミがほめてくれました。

「王様のかんむりもいいけど、ぼくにはこのかんむりが一番だよ」
チャロは、花のかんむりのあまいにおいに、うれしくなりました。
それから3びきで花のたねをまき、水をあげ、森を花でいっぱいにしました。

山の向こうから、ズシーンズシーンと地ひびきが聞こえてます。
「あっ、ロックだ!」
3びきはうれしそうに、地ひびきのする方へ走って行きます。
ミツバチたちが、花の間をいそがしくとびまわっています。(おわり)

山本真由美 について

東京都在住、3児の母です。子ども達が小さい時は育児一色の生活をしていました。 実家のある地方に子ども達と帰省していた時、突然強い風が吹いてきて周りの木々が揺れました。身構える私の横で、2歳の息子は目をキラキラさせて嬉しそうに手を広げていました。風の音、草木の匂い、赤や紫がにじむ夕方の空。そんな一つひとつのことに喜んで全身で感じようとする子どもたちを見て、その感性に届くお話を書きたいと思いました。