◆文学がまちへ出てきた
このフェスティバルには作家・著述者など毎年80名ほど招聘されます。もちろんこの中には絵本・子供向け作品の作家たちも含まれます。
このように書くと、さぞかしエアランゲン市は大きな都市なのだろうと思われる読者諸氏もおられるかもしれないでしょう。しかし、わずか10万人。ドイツの都市は相対的に規模が小さく、音楽祭で有名なバイロイトでも7万2000人ほどの人口規模です。その上、まちの中心地といえば、お店やカフェ、レストランはもちろん、ギャラリーや図書館、広場や公園があります。だから普段から高齢者もカフェで楽しんでいるし、若者は「まちのどこそこで会おうぜ」と待ち合わせの場所にする。夫婦がベビーカーを押して来ることもできる。そんな場所なのです。
このような空間で行われる文学フェスティバル。メイン会場の宮殿庭園のみならず、市街地全体は拡声器で音楽が流れてきたりするわけでもなく、それでいてフェスティバル特有のわくわくした雰囲気もあります。「書を捨てよ 町へ出よう」ではなく、書がそのまま町へ出てきたかたちですね。このフェスティバルは今年で36回目。作家の朗読に耳を傾けている大人の中には、子供のときにも、ここで童話の朗読を聞いていた。そんな人もいるかもしれません。
筆者のHP:インターローカルジャーナル
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