『ながいながい骨の旅』
松田素子・川上和生 著
桜木晃彦・群馬県立自然史博物館 監修
講談社
2017年12月刊
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https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784062194754
❖海と切り離せない存在
先日、久しぶりに訪れた海辺で、波とたわむれながらふと思い出した絵本がありました。足元に広がる砂の感触、頬をなでる潮風、どこまでも広がる青に包まれていると、胸の奥でモヤモヤしていた感情が、すっと洗われるように静まっていったのです。そんな穏やかな時間の中で、私のお気に入りの一冊がふと心によみがえりました。
その絵本は、私たち人間の体と海との深いつながりを、やさしい絵とことばで語りかけてくれる作品です。地球の誕生から、海に生まれた生命がやがて陸に上がり、進化していく壮大な物語。でも、そこにあるのは決して難しい言葉ではなく、あくまで子どもの目線に寄り添った、やわらかで丁寧な世界の描写です。
特に印象に残ったのは、「血の中には、ナトリウムや塩素、カリウム、鉄など、海の水とおなじような成分が入っています。骨にも、カルシウムやマグネシウムなど、海の水にとけこんでいるものと同じミネラルがふくまれています。」という一節。そう、私たちは“海を体に持っている”のです。生まれる前に過ごす“羊水”もまた、太古の海を思わせる成分で満たされていると知り、私たちが海と切り離せない存在であることを改めて感じました。
(次のページに続く)