第3回犬の日特集③

いつの間にか時が過ぎ、今は風子が4丁目班のリーダーだ。低学年の世話をするのは、けっこう大変。特に、下校時はさわがしい。
「みんな、ちゃんと並んで、並んで」
風子の声に、横断歩道で旗をふるPTAのおばさんたちから「ごくろうさま」と声がかかる。が、すぐにまた、おばさん同士のおしゃべりへと移っていた。

「ほらほら、前に、この班のリーダーだったカッコイイ男の子、覚えてる?」
「覚えてるわよ、アイドルっぽい子だったな」
「あの子さ、勇斗君だったっけ、いなくなったの知ってる?」
風子の耳が、急に大きくなる。
「グレちゃったってうわさは聞いてたけど・・・。高1くらいでしょ、難しい年ごろね」
「家出だって。親も手をつけられないから、ほっといてるらしいわよ」

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