第3回犬の日特集⑤

「見て見て。小太郎。向こうから来るの、プードルの赤ちゃんじゃない?」
小さな、白い雲みたいなモコモコしたイヌが、トコトコ歩いてきます。
小太郎のからだが、またカチカチになりました。横を向いて、子犬に気づかなかったふりをします。

でも子犬は、(わーいお兄ちゃんだ! 遊んで、遊んで)と言わんばかりにちぎれそうなほどシッポをふって、小太郎にじゃれつきます。
「ほら、小太郎。ワンちゃんがいっしょに遊びたいって言ってるよ」
「こら、マシュマロ。小太郎くん、いやだって」

「ホントにダメねえ。ごめんなさい。小太郎、はずかしがりやで、どんなワンちゃんともなかよくなれないんです」
「そんなワンちゃんもいるわよ。気にしないで」
なごりおしそうに、小太郎をふり返りふり返りさんぽをつづけるマシュマロを見送りながら、花菜はため息をつきました。

「小太郎、どうしてみんなと仲良くできないかなあ。さっきのマシュマロちゃんなんて、赤ちゃんなんだから、こわくないでしょ。あーあ、もっと長い間、マシュマロちゃん、近くで見たかったなぁ」
花菜の言葉に、小太郎はシュンとなりました。
(ぼくだって、お友だちになりたいけど、身体が勝手にカチカチになっちゃうんだもん)

その日、家に帰った小太郎は、早速クマに話を聞いてもらいました。
「クマくん、ぼく、今日もだれとも友だちになれなかったよ」
「仕方ないんじゃない? だれともすぐにお友だちになれるワンちゃんも入れば、小太郎くんみたいにはずかしがり屋さんのワンちゃんだっているよ」

「だけど、花菜ちゃんの、がっかりした顔を見るのはいやなんだよね」
「それは、よくわかるよ。ぼくだって、いつもニコニコしてる花菜ちゃんを見ていたいもんね。どうしたらいいんだろうね。ぼくとはこうして、毎日たくさんお話できるのにね」