それから数日たったある日。
「小太郎、見てごらん。わたしが夕べ夏祭りでとった金魚だよ」
花菜は小太郎をだっこして、金魚を見せてくれました。
水の入ったガラスのうつわには、赤くてコロンとした生き物が、ひらひらしたものをくっつけて泳いでいます。
「名前つけようかな。出目金だからデメちゃんにしようっと」
(クマくんにこの話しなくちゃ)
花菜の部屋に帰った小太郎は、早速クマにほうこくです。
「リビングに来た金魚はね、水の中で泳ぐんだよ。赤くてひらひらがかわいいんだけど、目がでっぱっててびっくりしちゃった。」
「目が?」
「うん。ドーンって前にね。出目金っていうんだって。目が出てるから出目金。でね、花菜ちゃん、その金魚に名前つけたんだけど、デメちゃんだって。なんだかおかしくてわらっちゃった。目が出てるからデメちゃん。見たまんまの名前だと思わない?」
そう言ったあと、小太郎はわらうのをやめて、考えました。
「そういえば、ぼく、なんで小太郎っていう名前なんだろう」
あれこれ考えましたが、わかりません。
「ぼくなんて、小さいときから『クマちゃん』としか言われたことないから、名前のある君がうらやましいよ」
「きみは《クマ》っていう名前のクマなんじゃない?」
「そっか。ぼくの名前は《クマ》なのか。よかった、名前があって」
こんなに毎日、クマとおしゃべりする小太郎ですが、外ではやっぱりだれとも話ができません。







