デメが気になる小太郎は、毎日、イスに乗ってながめていました。
(今日こそ、ゆうきを出して話しかけるぞ!)
「ねえ、デメくん。毎日、そんなせまいところにいて、たいくつじゃない?」

「そうね、ちょっとせまいけど、たいくつじゃないわよ。だって、花菜ちゃんたちや小太郎くんをながめることができるから」
「へぇ、そうなの?」
「今日の花菜ちゃんのお洋服、ピンクのリボンがついててかわいいいなとか、小太郎くんは青い色のかんづめはあんまりすきじゃないけど、黄色い色のかんづめはすきなんだなとかね」
「へぇ」
そんなことまで見られていたのかと、ちょっとはずかしくなった小太郎です。
「小太郎くんみたいにあちこち行けたらもっと楽しいかもだけど、行けないからそんな楽しみを見つけたの」
花菜の部屋にもどった小太郎は、すぐにクマに話しかけました。
「聞いて、聞いて、クマくん。ぼくね、デメちゃんと話したんだよ!」
「すごいじゃないか。ぼくいがいの人と話せたんだね」
「うん。なんでだろう?」
「毎日長い時間、いっしょの家にいるからかもね。もしかしたら、今度はさんぽの時に会ったワンちゃんともお話できるかも」
「うん。そうだといいなあ」
「花菜ちゃんが小さいときは、あちこちだっこしてつれて行ってくれてたけど、今はどこへもつれてってもらえないから君がうらやましいよ」
「そっか。じゃあ、ぼくが見てきたこと、二人に話してあげなくちゃね。
いつか、他のワンちゃんとも話せたよって言える日、来るといいなあ」
明日のさんぽが、ちょっぴり楽しみになった小太郎でした。
(おわり)







