どんな状況でも心を豊かに!
『小公女』
F.H.バーネット 作
越水利江子 文
丹地陽子 絵
ポプラ社
女の子は誰もが幼少の頃に『小公女』の童話を読んでいるのではないでしょうか。それぐらい名作中の名作ですね。1888年にアメリカの女性作家(イギリス出身)F.H.バーネットによって発表されましたが、舞台化での成功や加筆があり、1905年に『リトル・プリンセス』として再構成された作品が現代の『小公女』(邦訳名)として受け継がれています。
心優しいセーラは、お金持ちのお家の一人娘としてインドで育ち、7歳の時にミンチン女学院に入学するために、お父さまと一緒にイギリスへ戻りました。セーラが生まれてすぐにお母さまが亡くなったので、人への感謝や思いやりのわかる女の子に育っていました。
ミンチン女学院では一番豪華なお部屋に住み、自分より小さな学年の女の子も、お勉強が苦手なクラスメートにも、そして使用人の女の子にも気を配り、自分のお部屋でお茶会を開いて、すてきなお話を読み聞かせてあげたりして過ごしていました。
使用人のベッキーにはいつも、お腹を空かせているので、エプロンのポケットにケーキを入れてあげていました。
その後、遠い外国でお父さまが病気で亡くなり、セーラは学院一のお嬢様から、ボロを着た使用人となり、粗末な扱いを受けていました。そんな中、お勉強が苦手なクラスメートがこっそりわたしてくれたケーキ、そして学院の隣に越してきた、謎のインド帰りの紳士から届いていた屋根裏部屋での豪華な食事や焼き菓子に、セーラのやりきれない思いは満たされていったようです。
物語の中では、貧しい子供たちのお腹をすかせた状況もいくつか描かれていますが、これは当時のイギリスの実情を物語っているのでしょう。
今回ご紹介するフルーツパウンドケーキは、イギリスで生まれた日持ちのする焼き菓子です。お嬢様であったセーラがベッキーにこっそりとあげたケーキも、使用人となったセーラが受け取った焼き菓子も、きっとこんな風だったでしょう。
パウンドケーキの由来は、4つの代表的な材料をすべて1パウンドずつ混ぜ合わせたことから名づけられたケーキです。小麦粉、卵、バター、砂糖が1パウンド(550g)ずつです。現代の一般家庭では、これだと量が多すぎるので、この4つの材料を100g前後にアレンジされたものが主流となっています。
セーラが過ごした時代はまだ砂糖は貴重なもので、一部のお金持ちの人しか口にすることはできませんでした。
現代の小麦粉は食品がフワフワになるよう改良され、昔の小麦粉のように栄養価は高くありません。そして小麦粉に含まれるグルテンが健康に害をおよぼす、という世界中の研究者からの指摘もあります。
そこで、小麦粉の代わりに米粉を使い、そして砂糖の代わりとして、カロリーがほぼゼロの天然甘味料・エリスリトールを使って、当時のパウンドケーキを再現してみました。