『ジス・イズ・ロンドン』(改訂版)
ミロスラフ・サセック 著
松浦弥太郎 訳
スペースシャワーネットワーク
サセックの絵本との出合いは確か大学生の頃だったと思う。表紙のイラストがとても可愛くて思わず手に取ってページをめくった。そこに広がる色鮮やかなイラスト、温かみのあるタッチに一瞬で心を奪われ、しばし絵本を眺めていた。
それから数年後、私はロンドンへ留学した。留学中にサセックの絵本を読むことはなかったし、思い出すこともなかった。再びこの絵本と出会ったのは、日本に帰国後、自分もイラストや絵本を描くようになってからだった。制作の参考にと本屋や絵本カフェに足を運んでいた時に偶然見つけた。
数年ぶりに見た『ジス・イズ・ロンドン』は色褪せることなく、50年以上前の作品とは思えないくらい新鮮な光を放っていた。
絵本は旅のガイドブックになっていて、ロンドンの名所がたくさん登場する。留学中にこの絵本を片手にロンドンの街を歩いたらどんなにワクワクしただろうと今となっては後悔している。
2階建ての赤いバス、ビッグ・ベン、バッキンガム宮殿、タワー・ブリッジ、新鮮な野菜や果物があるマーケットなど、ページをめくるたび魅力的なロンドンの姿が目に飛び込んでくる。
急ぎ足で地下鉄を行きかう人々、パリッとスーツを着こなして颯爽とロンドンの街を歩くビジネスマン達、優しいタッチと鮮やかな色使いで、細部まで書き込まれたユーモアのあるイラストを眺めていると、まるで自分が旅をしているような楽しい気分になる。
いつか自分も行ってみたいなと想像を膨らませながら、子どもだけでなく大人も楽しめる絵本だ。
私自身、制作に行き詰った時など、よくこの絵本を眺めている。そうすると、何だか外へ出たくなったり、あてもなくブラブラと歩きたくなったり、体を動かしたくてウズウズしてくるのだ。インスピレーションが刺激され、自然と制作したい気持ちが高まってくる。
この絵本を読む子どもたちにも、ページを開くごとにワクワクして旅に出かけたくなるような、いてもたってもいられないような気分になってくれたら嬉しい。世界はとても広い。
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