美しい雪景色の中、ラビッタちゃん一家が向かったのは・・・!

こおりのむこうに

かじり みな子 作
偕成社 2021年12月刊


今回ご紹介するのはラビッタちゃん一家の絵本シリーズ。冬を舞台にしたお話です。
ある晩、ラビッタちゃんとピョコラッタちゃんの弟、ピントパットくんの元気がありません。「びょうきなのかしら?」と家族みんなは心配になり、一家総出で病院に連れていくことにしました。

外に出るとあたり一面は雪の覆われた銀世界。そりを通る道すらない程の雪です。
なんとか道をつくり、そりがすべり出すと段々と凍った湖が見えてきました。病院はその湖を渡った先にあります。
しばらくすると滝の前に出ました。滝も寒さのせいで凍りつき、つららはまるでおばけのよう。その奥に大きな扉見えてきてやっと病院に到着です。

病院の中の様子、待合室での会話、お医者さんの診察風景、お薬屋さんでお薬をもらうシーン・・・など、どれも緻密に丁寧に描かれた絵に思わず見入ってしまいました。
冬の病院は大混雑。受付でせわしなく対応している病院のスタッフ。待合室で待ついろんな動物たち。それぞれの姿から、そこにもまたいろんな物語があることを想像させてくれます。

ピットパットくんは診察を受けると病気の原因もすぐにわかり、すっかりよくなりました。
ラビッタちゃんたちは待合室でママがお薬をもらってくるのを待っていると、さっきまでいたはずのピントパットくんがいないことに気がつきます。あれ? どこにいってしまったのでしょう?
その後、日が暮れた冬景色の中をランタンの明かりをともしながら帰路につきます。

その時、楽しそうなかけ声も聞こえています。
「ピント ピント パット ピン」「ラッタ ラッタ ラビッタ ラッタ」
「ラッタ ラッタ ピョコラッタ」なんだか心が躍る感覚になりますね。

おうちに着くと、ラビッタちゃん一家は、お医者さんからすすめられたお風呂にみんなで入ることにしました。
雪の世界で温かいお風呂に浸かりながらお風呂に入るのシーンは最高です。家族みんなの幸せそうな笑顔を見ていると読者の心までほっこりと温まります。

夜空にはオーロラが躍っています。この景色はとても幻想的で私が一番好きなシーンです。ぜひ絵本を手にとってご覧ください。
家族が一緒に助け合いながら生きる心温まる物語。家族愛、兄弟愛、家族の大切さが伝わってくる絵本です。

かじりみな子さんの描く独特の美しい世界観、その世界に向けられる優しい眼差しにも心奪われます。
まさに幸せな家族の姿を思い起こさせてくれる絵本ですね。
ぜひお父さん、お母さん、お子さん、家族そろって読んでみてください。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 著書に『おへそはなにしてる?』(クリエイターズ絵本「YOMO」) ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】