❖いっしょに読めてよかった
やがて、病院の食事すら喉を通らなくなってしまった女の子の様子に、お父さんは“沈黙”の中に込められた願いを感じ取ります。そして、迷いや不安を乗りこえ、再び子ネコたちを迎え入れる決意を固めるのです。そして、女の子を待っていた“あるサプライズ”が、物語にさらなるやさしさと希望を添えてくれます。
この作品のもうひとつの大きな魅力は、「ささやかな日常の中にある気づき」を、あたたかなまなざしで描いているところです。言葉にできない想い、相手を思うがゆえの遠慮、そして“愛すること”の形が、女の子とお父さんそれぞれの視点から丁寧に表現されています。女の子が子ネコを手放す提案をしたお父さんに対して「あたし、がまんする・・・」と口にした背景には、どれほどの葛藤とやさしさがあったことでしょう。その一言が、読み手の胸にも静かに問いかけてきます。
わが家の小学3年生の息子も、この作品を読みおえたあと、「ほんとうは飼いたかったんだね」とぽつりとつぶやき、そのまましばらく静かに考えこんでいました。そして、「お父さんもすごく優しいね」と口にしたとき、この作品をいっしょに読めて本当によかったと感じました。
(次のページに続く)