親子で読むのにぴったりの一冊

いっしょに読めてよかった

やがて、病院の食事すら喉を通らなくなってしまった女の子の様子に、お父さんは“沈黙”の中に込められた願いを感じ取ります。そして、迷いや不安を乗りこえ、再び子ネコたちを迎え入れる決意を固めるのです。そして、女の子を待っていた“あるサプライズ”が、物語にさらなるやさしさと希望を添えてくれます。

この作品のもうひとつの大きな魅力は、「ささやかな日常の中にある気づき」を、あたたかなまなざしで描いているところです。言葉にできない想い、相手を思うがゆえの遠慮、そして“愛すること”の形が、女の子とお父さんそれぞれの視点から丁寧に表現されています。女の子が子ネコを手放す提案をしたお父さんに対して「あたし、がまんする・・・」と口にした背景には、どれほどの葛藤とやさしさがあったことでしょう。その一言が、読み手の胸にも静かに問いかけてきます。

わが家の小学3年生の息子も、この作品を読みおえたあと、「ほんとうは飼いたかったんだね」とぽつりとつぶやき、そのまましばらく静かに考えこんでいました。そして、「お父さんもすごく優しいね」と口にしたとき、この作品をいっしょに読めて本当によかったと感じました。

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神原えみ について

湘南在住の2児のママ、(かんばらえみ)です。ペンネームはモンテッソーリガイドえみとして執筆をしています。『分かりやすい!モンテッソーリ教育』、『幼児教育をはじめる前に読む本』、『ORIGAMIはじめてのおりがみ(日・英バイリンガル)』といった書籍を出版してきました。普段は、インターナショナル園に勤務をしながら、「ママも子どもと同じくらい自分を大切に」を理念に活動をしています。さらに、2026年5月にはメキシコで開催される国際モンテッソーリ大会にて、モンテッソーリ教育とおりがみを融合させた書籍をご紹介します。