最後の望みをかけて、腕のいい修理屋さんが駆けつけてきた。
「故障している物を動かすのが、わたしの仕事なんだ。止めるなんて、初めてだ」
と、ぶつぶつ言っている。
止めるほうが簡単そうに思えるけど、
「うーーーん」
やっぱり無理みたいだな。いじりすぎて、かえって動きがはやまったような。
サロンに集まった人たちの顔が、だんだん青ざめてきた。
「やがて時計は2分前になり、1分前になりーーー」
パパが、重たく口を開いた。
「そして、わたくしたちは消えるのです。時計を動かした我々、大人たちは仕方がないとしても、子どもたちまで巻きぞえにするのは胸が痛む」
ママのすすり泣く声が、サロンにこだました。
パパは、言葉をつづける。
「さぁ、みなさん。もう、家へもどってください。残された時間を、家で心落ち着けて過ごすのが、唯一の幸せでしょう」