那須「えほんの家MURMUR」にて個展を開催

那須えほんの家展1私、いのうえちひろは、栃木県那須町の木々に囲まれた静かな別荘地の中にある、小さな絵本美術館「 えほんの家 MURMUR(マーマー)」で、毎年個展やグループ展をさせていただいております。

「まんだいこんのかいすいよく」書影今回は、新緑の5月に個展の機会をいただき、横須賀の絵本店・うみべのえほんやツバメ号
で販売されている自作絵本『まんだいこんのかいすいよく』の原画と、春らしい雰囲気のパステル画や布絵を展示しました。

『まんだいこんのかいすいよく』は、横須賀市にある、かやぶき屋根の古民家「万代会館」と、三浦半島特産のダイコンをひっかけたキャラクター、「まんだいこん」が大活躍するおはなしです。
万代会館は、昭和の財界で活躍した万代順四郎さんと、その妻・トミ夫人が、戦後に自給自足のつつましやかな農耕生活をしていた屋敷です。

絵本を制作するにあたり、万代さんについて書かれた本(石川英夫著『種蒔く人-万代順四郎の生涯』毎日新聞社)を読んだのですが、万代さんとトミさんの、激動の時代の中でひたすら世のため人のためにつくした素朴な人柄に心を動かされました。
万代さんと、万代夫妻が住んだ家のことを、子どもたちに楽しく伝え、親しみを持ってもらいたい、と願いながら、絵本を創作しました。
横須賀から遠く離れた那須の方々にも、この展示を通して微力ながら万代さんのことを知っていただけたかな、と思います。

えほんの家展2お客様に楽しんでいただけるよう、消しゴムハンコで作成した、絵本の主人公まんだいこんのスタンプと、ぬりえのコーナーを置きました。特にスタンプが子ども達に人気だったそうです。
窓の外は木立が揺れ、展示された作品たちも森の空気を深く吸い込んで気持ち良さそうでした。

2007年に開館したえほんの家MURMURは、来年10周年を迎えるそうです。
昔の蔵を移築しリフォームされた館内は落ち着いた雰囲気で、外を流れる小川のせせらぎをBGMに、展示を観る他にも、お茶を飲んだり、MURMURさんが所蔵する様々な絵本を読んだりできます。時間を忘れてゆっくりできる、ひみつの隠れ家のような素敵な場所です。

レポート:いのうえちひろ
撮影:えほんの家MURMUR

いのうえちひろ について

1973年生まれ。東横学園女子短期大学国語国文学科卒業。あとさき塾で絵本を学ぶ。 主な作品に、絵本『おふとん』(チャイルド本社)、紙芝居『かたづけたろう』(教育画劇)等。パステル・色鉛筆によるイラストレーションの他、古布を利用した布絵を制作。 「いのうえちひろ 絵本・布絵創作記録/