銀のかけら流れる川のほとり(3/5)

文・北森みお  

写本 -3銀のかけら流れる川のほとり少女は誰もいない暗い家に入り、ランプをつけます。
そして、うす灯かりの中で、拾ってきた星のかけらを数えるのです。
ひとつひとつ、自分の白いエプロンで、かけらについている水の玉をふき取りながら。

数え終わると、机の引き出しから、ノートとペンを取り出し、青いインクで、きょうのかけらの数字を書きこみます。

数え終えた星のかけらは、ノートとインクの引き出しとは別の引き出しにしまいます。
その引き出しは、拾ってきた星のかけらで、きっちりいっぱいになるのでした。
そう、この引き出しひとつが、バケツ一杯分の量なのです。
不思議なことに、次の日の星のかけらを入れるころには、きょう入れた星のかけらは、なくなっています。
引き出しは空っぽになっています。
それで新しい星のかけらを入れることができるのです。

たぶん、川で拾う星のかけらは、とてももろく、すぐに細かく割れてしまうものだから、ひとばんの間に、もっともっと小さなかけらになって、引き出しのすき間から流れ出て、家の外に出て、また川にもどっていくのだわ、と、そんなふうに少女は思っています。
星のかけらを入れた引き出しを、ぱたんと閉める音で、少女の一日の仕事は終わります。
ランプの灯りを消し、少女はベッドに入ります。

北森みお について

小説、童話、脚本など執筆。日本児童文芸家協会研究会員。 主な作品に『星夜行』(パロル舎/広島本大賞ノミネート)、『時の十字架』(鉱脈社/Qストーリー大賞優秀賞)、『ひろしまの妖怪』(中国新聞『おはなしばこ』掲載)、『北極星の夜』(『日本児童文学』掲載)、『深海魚のユメ』(国木田独歩記念事業文学祭入賞)、『T字橋の欄干」(広島市民文芸一席入賞)、『つばさ屋』(ラジオドラマ脚本)『星夜行-約束のリボン-』(ラジオドラマ脚本)など。 電子書籍に『美しいかけらの物語-ワニと薬指-』(ティアオ)、 『ホテルねこ堂』(星の砂文庫/童話と絵本コンテスト審査員特別賞) などがある。 近年作詞も手がけ、提供した楽曲に「風のソネット」「ロマンチカ」(作曲、歌はメロディストの田中ルミ子さん)などがある。