銀のかけら流れる川のほとり(5/5)

文・北森みお  

写本 -5銀のかけら流れる川のほとり今夜も少女は、ランプの下で、拾った星のかけらを数えます。
数えた数字を、青いインクでノートに書きます。

――いなくなったあのひとは、毎日毎日、こちらに手をふっていたことを忘れはしないのかしら。こちら岸で星のかけらを拾っていたわたしのすがたを、思い出すことはあるのかしら。覚えているとしたら、いつまで覚えているのかしら。わたしはこれから毎日、あのひとのことを、思うのかしら――

数字を書き終えたあと、少女は、しばらく少年のことを思いました。
少年の面影は、たやすく消せるものではありませんでした。
それでもいつものように、少女は、星のかけらを引き出しにしまい、灯かりを吹き消し、ベッドに入ります。

――あのひととわたしのあいだ、くり返し流れ、今も流れている、いとしい銀色のかけらたち。流れる川のほとり、たいせつなひとが、手をふってくれますように。わたしも手をふります――

祈りながら少女は、川を流れる星の光とともに、眠りにつきます。

おやすみなさい、かけらたち
おやすみなさい、たいせつなひと

北森みお について

小説、童話、脚本など執筆。日本児童文芸家協会研究会員。 主な作品に『星夜行』(パロル舎/広島本大賞ノミネート)、『時の十字架』(鉱脈社/Qストーリー大賞優秀賞)、『ひろしまの妖怪』(中国新聞『おはなしばこ』掲載)、『北極星の夜』(『日本児童文学』掲載)、『深海魚のユメ』(国木田独歩記念事業文学祭入賞)、『T字橋の欄干」(広島市民文芸一席入賞)、『つばさ屋』(ラジオドラマ脚本)『星夜行-約束のリボン-』(ラジオドラマ脚本)など。 電子書籍に『美しいかけらの物語-ワニと薬指-』(ティアオ)、 『ホテルねこ堂』(星の砂文庫/童話と絵本コンテスト審査員特別賞) などがある。 近年作詞も手がけ、提供した楽曲に「風のソネット」「ロマンチカ」(作曲、歌はメロディストの田中ルミ子さん)などがある。