コミックエッセイ『アトピーの夫と暮らしています』の出版を振り返って
私の夫は、重症の成人型アトピー性皮膚炎です。私も最初は、アトピー性皮膚炎は、「ただかゆいだけの病気」と思っており、あまり重く考えていませんでした。
けれど、実際に夫の症状を目の当たりにして、重症になると通常の社会生活を送るのも困難な状態になることを知り、驚きました。
背中の皮膚がゾウのようになり、まぶたが普段の倍以上に腫れ上がり、真っ赤な顔をして、それでも会社に通っていた夫。私はそんな彼を支えながら、独学で食事療法や生活改善を必死に調べました。それは孤独な闘いでした。
きっと世の中には、私と同じように闘う多くの妻や母や家族がいるのだろうと思いました。そんな人たちに、「ひとりじゃないよ」と伝えたい。そして、よく知られていながら、実態についてはほとんど知られていない、アトピー性皮膚炎と言う病気について、もっと広く知ってほしいと思い、この本を描こうと思い立ちました。
紆余曲折あって、無事企画が通り、本書を世に出せると決まった時の嬉しさは、言葉には言い表せないほどです。しかし、そこからはさらに、別の苦しい闘いが待っていました。
闘病の始まりは執筆当時から4年ほど前のことで、冷静に描くことができましたが、長い闘病生活の最後の方は、まだまだ生々しい記憶が残り、思い出すのも辛く、毎日泣きながら描いていました。
半年ほどの執筆期間を経て、無事本書は刊行されました。
何と初めての著書に関わらず、MARUZEN名古屋本店で、トークショーとサイン会を行っていただけることになりました。当日までは、とにかく客席がきちんと埋まってくれるのか心配で、毎晩なかなか寝付かれないほどでした。
お陰様で、満員御礼、和やかな雰囲気の中で、心温まる会となり、来て良かったです、とお客様に言っていただき、胸が一杯になりました。
本書を読んだ方からは、よく「泣いてしまった」と言われます。友人からは、一人で頑張り過ぎちゃダメだよと叱られもします。「ひとりじゃないよ」と伝えようとしていた私自身が、「ひとりじゃない」ことをすっかり忘れていました。
本を作るのも、イベントを行うのも、たくさんの方の手が携わって、たくさんの方の力があってのこと。いろんな方に支えられて、この本が生まれて、旅立って行くことに、本当に感謝の想いでいっぱいです。
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