❖楽しい心の変化をくれる
読み進めて驚かされるのは、物語だけで終わらない構成です。巻末には「かぼちゃのケーキのつくりかた」や「ジャック・オー・ランタンのつくりかた」が載っており、読み終えたあとには台所が“つづきのページ”へと変わります。物語の余韻が生活に静かに接続していく設計が、とても素敵です。
また、多くの子どもが意味を深く知らないまま口にする「トリック・オア・トリート」の意味に、歴史と由来の糸をていねいに通してくれる点も大きな魅力。ハロウィーンの背景が魔女の女の子の日常に織り込まれ、行事を“記号”から“自分ごと”へと変えてくれます。この絵本は「季節の行事のリズムを自分たちの生活へ編み直す」静かな手引きになります。
本を閉じると、「はやくハロウィンにならないかな」「パンプキンパイも食べてみたいな」と息子が横でニコッと笑いました。「今までアップルパイしかつくったことがなかったけれど、パンプキンパイにも挑戦してみようかしら?」そんな楽しい心の変化をくれる一冊です。ハロウィンのことを親子で学ぶことができた充実した時間でした。

イラスト:サクソラまてりある https://39sora.com/