静かな手引きになる一冊

楽しい心の変化をくれる

読み進めて驚かされるのは、物語だけで終わらない構成です。巻末には「かぼちゃのケーキのつくりかた」や「ジャック・オー・ランタンのつくりかた」が載っており、読み終えたあとには台所が“つづきのページ”へと変わります。物語の余韻が生活に静かに接続していく設計が、とても素敵です。

また、多くの子どもが意味を深く知らないまま口にする「トリック・オア・トリート」の意味に、歴史と由来の糸をていねいに通してくれる点も大きな魅力。ハロウィーンの背景が魔女の女の子の日常に織り込まれ、行事を“記号”から“自分ごと”へと変えてくれます。この絵本は「季節の行事のリズムを自分たちの生活へ編み直す」静かな手引きになります。

本を閉じると、「はやくハロウィンにならないかな」「パンプキンパイも食べてみたいな」と息子が横でニコッと笑いました。「今までアップルパイしかつくったことがなかったけれど、パンプキンパイにも挑戦してみようかしら?」そんな楽しい心の変化をくれる一冊です。ハロウィンのことを親子で学ぶことができた充実した時間でした。

イラスト:サクソラまてりある https://39sora.com/

 

神原えみ について

湘南在住の2児のママ、(かんばらえみ)です。ペンネームはモンテッソーリガイドえみとして執筆をしています。『分かりやすい!モンテッソーリ教育』、『幼児教育をはじめる前に読む本』、『ORIGAMIはじめてのおりがみ(日・英バイリンガル)』といった書籍を出版してきました。普段は、インターナショナル園に勤務をしながら、「ママも子どもと同じくらい自分を大切に」を理念に活動をしています。さらに、2026年5月にはメキシコで開催される国際モンテッソーリ大会にて、モンテッソーリ教育とおりがみを融合させた書籍をご紹介します。