3 2つ目の願い
その夜、台所にすわって、セムは、ことのほか上きげんでした。
「今年は、豆も、小麦もいい出来だ。め牛は乳をよく出すし、ブタもまるまる太っている」
「あんたが、よく、働いて、世話をしたからですよ。お天気にも恵まれましたしね。ありがたいことです」
かたわらで、せっせと、何か、ぬいながら、にょうぼうのサラが答えました。
「明日、あれやこれや、町の市場に持っていくんでしょう? ずいぶん、いい値で売れるかしら」
「ああ、ばっちりだとも! それと、このビール! いつになく上出来だ! 2、3たる、持っていけば、さぞや、喜ばれることだろう。おまえ、ビール造りのうでを上げたじゃないか!」
セムは、味見のコップを、サラの方にかざして、にっこりしました。
「大麦パンを水でといて、煮て、冷まして、たるに仕こんだだけですよ。あんたに教えてもらった通りにね。あとは、自然の力と、神様の手が仕上げてくれたんです」
サラはてれくさそうです。
「町は、ちょうど、祭りの最中だ。踊り疲れた連中には、何よりのうるおいだろうよ」
「それにしても、あんた、ちょっと、味見が過ぎやしませんか。ふだんは、ちっとも、飲まないのに」
サラが、少し、心配そうに見やりました。
「ああ、そうだな。ほんの味見のつもりが、ちょっと、飲み過ぎたかな」
セムは、ずいぶん、顔が赤くなって、おしゃべりになっていました。