「なんておそろしいことを! 悪魔のうわさをすれば、悪魔がやって来るっていうじゃありませんか!」
「おれは、もう、会っているんだよ、悪魔・・・、いや、魔女に。この幸運は、魔女の指輪のおかげなんだ」
どうして、そんなことを、いまさら、打ち明ける気になったのか、セムにも分かりません。
やはり、ビールの味見をしすぎて、口が、ぺらぺら、軽くなったのでしょうか?
それとも、長年、一人で大きなひみつをかかえて来て、ふと、だれかに話して、心を軽くしたいと思ったのでしょうか?
いずれ、10年前、魔女に出会って、魔法の指輪をもらい、
「その力をかりて、まんまと、おまえのむこにおさまったんだ」
と、話してしまった時、セムは、心が軽くなるどころか、ますます、気落ちしてしまいました。
「ああ、どうせ、おれは死んだら地獄行きだ」
「あはははは! おまえさんたら!」
サラが大声で笑い出しました。
「あれが魔法なもんですか!」
「何だって!? どういうことだ?」
「あはははは・・・」
なかなか笑い止まないサラに、セムは、すっかり、ふくれっ面になりました。