サラは、あわてて、なみだ目をこすり、それでもおさまらず、ひくひく、しゃくりながら、わけを話し始めました。
「あの日、アダとミルカとあたしの3人で、草原で花をつんでいた。そしたら、見かけない兵隊さんが井戸ばたにやって来た。兵隊さんは、おかみさんから水をもらって飲み始めたんだが、村のことしか知らないあたしたちは、遠くからやって来た若い男がめずらしくて・・・」
3人の少女は、くすくす、笑いながら、いったい、何を話したことでしょう?
「村一番の美人アダが、気取ったしぐさで言ったんですよ。
『ねえ、あたしたちがあの井戸の所へ行ったら、あの兵隊さん、あたしたちふたりのうち、どっちが気に入るかしらね?』
アダは『あたしたち3人』じゃなくて、『あたしたち2人のうち』と言ったんですよ! もちろん、自分とミルカのこと。
あの2人ときたら、自分たちの器量をはなにかけて、いつも、あたしをばかにしていたんだから。あたしは、それが、くやしくて、くやしくて。
それで、3人そろって井戸ばたへ行ってみようということになった時、あたしは、心の中で、『どうか、兵隊さんがあたしを選んでくれますように』って、けんめいにいのったんです。
そしたら、ほんとに、あんたはあたしの手を取って、さけんだじゃありませんか!
『この子に決めたぞ』って!」
「そうは言わなかったと思うが・・・」