2025クリスマス特集⑥ クリスマスに、ほしいもの

クリスマスに、ほしいもの

おもちゃ屋のウィンドウに飾ってある黒ネコのぬいぐるみ。沙良(さら)は夏休み前からずっと、それがほしくて、パパやママにねだっていた。商店街のイチョウ並木が黄色く染まり始めた11月。今日こそ!とパパを引っぱり、おもちゃ屋の前に来てみたら、
「あ、見て! おうまさんに羽がはえてるよ」
ウィンドウにはこの間まではなかった、まっ白な馬のぬいぐるみが、飾られていた。大きな羽もまっ白で、光がさすたび、虹のように色を変える。だっこするのに、ちょうどいいサイズ。こんなにステキなぬいぐるみは、見たことがない。

「あれはペガサスっていうんだ」
パパが教えてくれた。
「空想の生き物なんだよ」
「へぇー。わたし、あれがほしい」
「おやおや、黒ネコじゃなかったのかい?」
パパはわらっただけで、今日もおもちゃ屋を通りすぎる。残念、でもいつか、ぜったい!
ペガサスさえ、お部屋になかま入りしたら、ほかには何もいらない。黒ネコなんて、ぜんぜんほしくない、と沙良は思った。

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田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ