クリスマスに、ほしいもの
おもちゃ屋のウィンドウに飾ってある黒ネコのぬいぐるみ。沙良(さら)は夏休み前からずっと、それがほしくて、パパやママにねだっていた。商店街のイチョウ並木が黄色く染まり始めた11月。今日こそ!とパパを引っぱり、おもちゃ屋の前に来てみたら、
「あ、見て! おうまさんに羽がはえてるよ」
ウィンドウにはこの間まではなかった、まっ白な馬のぬいぐるみが、飾られていた。大きな羽もまっ白で、光がさすたび、虹のように色を変える。だっこするのに、ちょうどいいサイズ。こんなにステキなぬいぐるみは、見たことがない。
「あれはペガサスっていうんだ」
パパが教えてくれた。
「空想の生き物なんだよ」
「へぇー。わたし、あれがほしい」
「おやおや、黒ネコじゃなかったのかい?」
パパはわらっただけで、今日もおもちゃ屋を通りすぎる。残念、でもいつか、ぜったい!
ペガサスさえ、お部屋になかま入りしたら、ほかには何もいらない。黒ネコなんて、ぜんぜんほしくない、と沙良は思った。
(次のページに続く)







