つぎの週末、ひとつ年上の、おとなりのおねえさんが、ひっこしのあいさつに来た。
「沙良ちゃん、今までなかよくしてくれて、ありがとう。これ、わたしが大事にしてたんだけど、友情のしるしに、あげる」
さし出されたのは、ちょっとよごれたペガサスのぬいぐるみ。よりによって、おんなじものなんて・・・。タンスの上で、ペガサスのまん丸い目が六つ、沙良をじっと見つめている。かわいい。
だけど、タンスにランドセルを乗せるスペースがなくなったのは、ちょっと不便・・・。
「いいんだ。わたし、ペガサスが大すきだもん」
つぎの週末、商店街の“年末福引き”イベントに出かけたお兄ちゃんが、
「おーい、沙良」
もどってきて、ドアの向こうで、じまんげな声をあげている。
「大当たり、出したぞ! すごいだろ」
ドアを開けると、そこにいたのは、ペガサスのぬいぐるみ!
「一等だぞ。カランカラン、ベルが鳴って、みんな、うらやましそうだったな。けど、これ、おれのシュミじゃないから、おまえにやる」
手わたされたペガサスを、沙良は複雑な気持ちで、ギュッとだいた。
かわいいペガサス。ほしくてほしくて、たまらなかったペガサス。
なのに、その夜、沙良は夢を見た。ペガサスだらけの部屋で、おしつぶされそうになっている夢。
来週の木曜日は、いよいよクリスマスがやって来る。ペガサスが大すきな沙良だけど、プレゼントは、「黒ネコがいいな」と思ってしまうのも、しょうがない、よね?
おわり








