おっ、久々にぼく、とべるんだ!
蔵の中のすき間に落っこちたぼくは、何年、いや何十年もわすれられていたんだ。だから、もう二度ととぶことはないと思っていたんだよね。
久しぶりに空にまうなんて、ワクワクするよ。ちゃんととべるかなあ。
公園に着くと、おじいちゃんがぼくをもった。
「お父さんが、このたこをあげるから二人とも見てなさい」
お父さんは、ぼくについている糸をもって走り始めた。
タタタタタタ
おじいちゃんが手を放すと、ぼくは空にまいあがった。
「すごい! たこ、あがったね」
うわぁ、なんて気持ちいいんだ。やっぱり空をまうのは最高だなあ。
お父さんは、風に合わせてぼくについた糸を、たぐり寄せたりのばしたりしている。
さすが、お父さん。おかげでぼくは空高くまってるよ。
「そらともやってみるか」
おとうさんは、糸をそらと君に持たせたんだ。
「風を指で感じるんだ」
「お兄ちゃん、がんばれ。タコタロウもがんばれぇ」
えっ? 今、うみと君、何て言った? タコタロウ? もしかして、それってぼくの名前?
ぼくは、名前なんてつけてもらったことがないから、びっくりしたし、すごくうれしかった。
そらと君は、うみと君のおうえんを受けて、いっしょうけんめい糸をあやつるけれど、うまくいかなくて、ぼくはヒョロロロロと地面に落ちた。
「おしかったなあ」
おじいちゃんの言葉に
「うん。とちゅうまではうまくいったんだけどね。ぼく練習して、お父さんみたいに上手にあげるようになりたい。タコタロウも長く空をとびたいよな」
そらと君も、ぼくの名前を言って話しかけてくれたから、ぼくはドキドキした。
「このたこに名前がついたんだな」
お父さんが、ちょっとおどろいた顔をした。
「タコタロウか。いい名前だね。おい、タコタロウ。良かったな、名前をつけてもらって。がんばって高くとんでおくれよ」
おじいちゃんまで、ぼくのこと、名前をよんで話しかけてくれたよ!
ぼくにとって最高の一日だ。いや、今までのたこ人生で一番うれしかった日かも。
(次のページに続く)








