すると、
「おめでとうございます」
澄んだ声が返ってきた。驚いてふり向くと、そこに白い着物の美しい女の人がいた。
鈴は、おばあちゃんの口まねで、
「どちらさまですか?」
と、たずねた。女の人はうす桃色の形のいいくちびるをほんの少し動かし、
「わたくし、大福茶をいただきにまいりましたの」
と、答えた。どうやら、おばあちゃんのお弟子さんみたい。まだ準備中と伝えると、女の人は、
「では、わたくしがお茶をたてましょう。見よう見まねですが」
『雪後庵』へ歩きだした。鈴もついて行く。並んで歩きながら、鈴は女の人を見上げ『こんなおねえさんがいたらいいな』と思う。おねえさんからは、いい匂いがする。お茶の香りとは別な、なにかもっと、あまいにおい。白い着物は、葉模様の地味な柄だけど、あでやかな白い顔によく似合っている。
『雪後庵』の竹格子を、おねえさんがそっと開けると、カラカラカラと、思いのほか大きな音が響き、鈴は、
「しーっ! ご近所のみなさんが起きちゃう」
おばあちゃんの受け売りで注意した。
「ごめんなさい。しーっ、ね」
(次のページに続く)







