5 お城の最後
それから、また、何年もたちました。でも、湖の王には、やはり世つぎになる子供は生まれませんでした。
「いったい、いつまで待てばよいのか!」
身勝手なディドーは、気のいいリンゴ王妃をなじります。リンゴ王妃は、悲しくてなりません。
実は、リンゴ王妃には秘密がありました。
これまで、何度身ごもっても、生まれるのはいつも魚の形をした子供たちだったのです。
おどろいたさんばたちは、王には本当のことは知らせずに、赤ん坊は死んだことにして、そっと湖に返していました。
魚の子たちは、うれしそうに湖の中に消えて行ったのでした。
「このままでは、自分は、きっとお城を追い出され、王様は新しい王妃をむかえるわ」
リンゴ王妃は、ある夜、だれにもないしょでよく当たると評判の町のうらない師を訪ねました。
うらない師は、とっくに、リンゴ王妃のなやみを見ぬいていました。
「お気の毒な王妃様。でも、ご安心ください。あなた様のおなやみをすぐにも解決してさし上げますよ」
「本当ですか!?」
何とも心強い言葉です。
リンゴ王妃は、黒ずきんの下の女の顔を食い入るように見つめました。
うらない師は言いました。
「あなた様が魚の子しか生まないのは、ディドー王の先の王妃、リムニー様ののろいのせいでございますよ。実は、リムニー様は人間ではなく、おそろしい魔力を持つ妖精だったのでございます」
リンゴ王妃は、真っ青になりました。
「妖精ののろいですって!? いったい、どうしたらそんなのろいを解くことができるの?」
うらない師はにんまりしました。
「簡単でございますよ。のろいの力は、お城の天守にある水晶玉から発せられております。ですから水晶玉を取り除いてしまえば、あなたのお体はもとの健康を取りもどし、魚ではない、元気な人間の赤ちゃんをお生みになることでしょう。
ただし、王妃様、このことは、だれにもないしょでございますよ。あなた、おひとりの力でなさらなければなりません」
「でも・・・」