「ハリネズミさんのきんちょうをほぐしたまでのこと。心がほぐれれば、しぜんに体もほぐれるものです」
「ああ、ありがとう。心がこんなに晴れやかになったのははじめてです」
ハリネズミはなみだを流しながらサワガニにお礼を言いました。
「ぼくはさみしんぼうの森を出て、友だちをさがす旅に出ようと思います」
「なら、わたしが友だち第一号ですね」
ハリネズミがおどろいた顔をします。
「あら、ちがいましたか?」
「ちがいません! ちがいません!」
ハリネズミはなみだをぬぐうと、「また、ここに来ます」とやくそくしました。
「はい、おきゃくさまとしてだけでなく、ぜひおいしい紅茶を飲みに来てください」
「かならず!」
そうしてハリネズミは理容室をあとにしました。
サワガニは、小さくなってゆくハリネズミのまき毛のせなかを、いつまでもいつまでもながめていました。
「ハリネズミさんなら大丈夫」
サワガニはつぶやくようにはげまします。
「きっと、たくさんの友だちができますよ」