『たびいえさん』
北川チハル 作
青山邦彦 絵
くもん出版
「えっ!」
この本を読み始めて、すぐに出たのがこの言葉。
ひとりぼっちがさみしくて、旅に出たのはなんと、「お家」だったからだ。
――たびいえさんとは、旅をする家。
それに気づいたとたん、私はもうワクワクしてページをめくっていた。
今、この絵本を読んでいる私の家も、
「もしかして?」
「まさか旅を?」
そうやって楽しい想像をふくらませながら、私はどんどんページを繰ったのだ。
「今日からわたしは川をながれてたびをする『たびいえ』になるんだわ!」
自分が話せることに気がついた家は、そうやって旅に出た。
ところが「たびいえ」は、動物やほかの家に出会ううちに、自分の胸にぽっかりと空いた穴に気づくのだ。
――さびしいな。
むかし、自分のすぐそばで生活をしていた親子の存在を思い出し、「たびいえ」は、自分の胸にひめた願いごとに、気がつくのだった。
そうして勇気をもって旅をすすめる「たびいえ」は、水中の生き物や、うさぎ村のみんなと出会っていくのだった・・・。