『こどな』
鈴木茂夫 著
らんか社
少年(青年)時代の心の空を感じて眺める詩集です。
時は流れるように過ぎていきますが、あの時、あの時の人を心にとどめておきたいなと思うことは、誰にとってもあると思います。この本には、そんな、その時の気持ちを残してくれている詩が、描かれています。
本を鑑賞すると、、いくつかの場面が心を駆け巡りました。その駆け巡った詩をご紹介したいと思います。
「牛乳」 人を信じる経験はこういう所からかな、と思える詩です。少年のような体験があると、この世の信じるところにつなぎ止めてくれるような・・・。心の核となっていくような・・・。梅田おばちゃんの何気ない機転は、暖かい記憶でしょう。読むと優しいい気持ちになれます。
「にじ」 皆と共有できる美しさがある虹。たとえ雨が降っても、みんなで風景を楽しみたい。心の中が嬉しさでいっぱいになります。
「頭をたたく人」 戦争を経験した方の戦後の様子が描かれています。戦争は経験しないと、本当の辛さは解りえないもの。たびたび去来するのかもしれません。そして頭を叩いて、戦後も静かに心に刻み続けているのかなと思いました。精神論では変えられないものをお持ちだなと感じました。
「十代」 とどまっている心。確かにそうですね。私もそうだと・・・。でも何かに守られていた中で、考えていたと思います。十代ってそうですね。
多くの人は、いつも年齢に追いつかないままで年をとっていくと思いますが、今の自分と過ぎた自分と地続きでつながっていると思います。
ふと懐かしい日々の気持ちにもどりたい時、本の中の詩を読むと、過去流れた雲をもう一度眺めているような、そんな錯覚に陥れるかもしれませんよ。たとえ同じような経験がなくても。ぜひこの詩集を開いて読んでみてください。