そうして、何度目かの朝のこと。
川の向こう岸に目をやったとき、そこに、いつもの少年のすがたはありませんでした。
いない? いない。いないですって?
いつもの少年が、そこに、いないということ。
少女は、いったいそれをどう思っていいのか、どうしていいのかわからず、しばらくは星のかけらも拾わず、ぼんやりと向こう岸をながめていました。
――たとえばとても大切な人が自分のそばからいなくなること。その反対に、自分が大切な人のそばからいなくなること――
少女はここで星のかけらを拾う仕事をするずっとずっと昔、そんなことがあったことを思い出しました。
それは記憶の向こう側のはるかな国に、かすみのベールをかけてしまいこんでいたことでした。
少女は向こう岸に向かって、声を出してみました。
泣き声のような、叫び声のような、だれかを呼ぶ声のような、そんな声でした。
自分に声が出せることに、少女は、おどろきました。
でも、それもつかのま、気がつくと、いつのまにか腰をかがめて、いつものように星のかけらを拾っているのでした。
たとえ、向こう岸の少年はいなくなっても、陽が暮れて川面がすみれ色に染まり、バケツがいっぱいになるまで、少女は手を休めることはありませんでした。