『かわいいこねこをもらってください』
なりゆきわかこ 著
垂石眞子 絵
ポプラ社
日本では1年で約13万頭もの犬や猫が保健所で処分されているという。ペットの避妊、去勢手術をせず、あげく生れてきた子犬や子猫を飼えないからと、もらい手がないからと、いとも簡単に捨ててしまう。生き延びたそれらの犬や猫が、また子を産んでしまう。人間の身勝手により不幸な犬・猫が、いつまでも減ることはない状態だ。
我が家ではそんな状況を見過ごすことができず、捨て猫を見つけると保護している。そして里親を探すことを16年続けている。今まで保護した猫(子猫)は80数匹。病気などで召天した約1割の子たちをのぞいて、すべて里親を見つけてきた。
しかし、いざ子猫を保護すると「必ず優しい飼い主を探すぞ」という前向きな気持ちと「もし見つからなかったらどうしよう」という不安な気持ちがいつも入り交じる。本書は、そんな気持ちを非常にうまく表現した、涙なしには読めないストーリーだ。
本書の主人公ちいちゃんは学校の帰り道に子猫が捨てられているのを見つけ、家に連れて帰る。3年前にお父さんが亡くなり、ちいちゃんは、お母さんと慎ましく暮らしている。家はペット禁止のアパートだ。
ちいちゃんは学校で、そしてお母さんは職場で新しい飼い主を探しはじめる。里親がすぐに見つかると思ったのに、なかなか見つからない。ついには大家さんに発覚してしまい、1週間経って飼い手が見つからなければ、子猫は保健所行き、それが嫌ならアパートの退去を命じられる。
日に日に可愛くなる子猫。自分の運命も知らず、子猫はかぎっ子のちいちゃんが学校から帰ってくると玄関で「ちい!」と鳴いて出迎えくれる。守ってあげたいのに、子どものちいちゃんはあまりにも無力だ。ちいちゃんには、ポスターを配りながら「子猫をもらってください」ということしかできない。刻々と迫る「審判の日」に、ちいちゃんの心は張り裂けそうになる。 子猫の運命は、そしてちいちゃんの心はどうなってしまうのか・・・。
本書は、小さな命の大切さ、その命を守ろうとする母と子のあたたかい心が、小学校低学年の子どもたちへ十二分に伝わる作品だ。
毎頁に描かれている垂石眞子氏の絵もすばらしい。最終頁の絵が涙を誘う。ペットを飼っている家庭も飼っていない家庭も、ぜひ本書を親子でいっしょに読んでほしい。そして、人間の身勝手から不幸になっている多くの犬たち、猫たちへ思いを馳せていただければと切に願う次第だ。
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