幼年童話の書き方~第1部「基本のキ」その6

その6「語りの人称と視点」(前)

幼年童話に限らずどんな物語も語り手が読者に向かってお話を語っていく、というのが基本的な構造です。で、その語り手が主人公をどう呼ぶかという「語りの人称」で語り手と主人公の関係が決まります。
語りは語り手と視点によって三つのスタイルに分けられます。

1.一人称一元視点
主人公自身が語り手となって語っていくスタイルです。主人公が語り手なので「ぼくは……」「わたしは……」といった一人称の語りになります。
また、主人公の視点で語っていくので視点は一つに限定されます。

そのため、主人公が直接見たり聞いたりしたことしか語れません。主人公がいないところでの話を語る場合は伝聞という形になります。
主人公以外の人物の気持ちも表情やしぐさから想像・推測するだけです。

2.三人称一元視点
お話の登場人物とは、別の第三者が語り手となって語っていくスタイルです。語り手が第三者なので「太郎(主人公の名前)は……」「彼は……」といった三人称の語りになりますが、主人公の視点に限定した一元視点です。
語り手が主人公に寄り添いながら語っていくという感じでしょうか。

一元視点なので、主人公がいないところでの話や主人公以外の人物の気持ちを語るときは、一人称の語りと同じような制約があります。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。