幼年童話の書き方21~第2部「名作に学ぶ」その9

その9『1ねん1くみ』シリーズ--読者はきっと好きになる
『1ねん1くみ』シリーズ
(後藤竜二・作 長谷川知子・絵 ポプラ社 1984年~2009年)

暴れだしたら

『1ねん1くみ』シリーズ(全25巻)の第1巻『1ねん1くみ1ばんワル』は、「くろさわくんて、わるいんだよ。1ねん1くみで、1ばんワル」という書き出しで始まります。

くろさわくんは主人公ではありません。主人公はクラスメートの「ぼく」です。ぼくがくろさわくんとのエピソードを一人称の語りで語っていきます。なので、この「1ねん1くみで、1ばんワル」というは、ぼくの偽らざる気持ちなんですね。

くろさわくんがどれほどのワルかというと、ざっとこんな感じです。自転車をぶっ飛ばしてみんなを追いかけまわすわ、こじまくんにからかわれてキレると襲いかかっていくわ、授業中に勝手なことを言って騒ぎだすわ。先生が注意してもへっちゃらで、ときには「あっかんべー」も。くろさわくんが暴れだしたら、授業中でも1ねん1くみはめちゃくちゃになります。

ぼくにはいつも命令してくるし、みんなに相手にされないとぼくにちょっかいをかけてくるし、パンチやキックが飛んでくることもあるので、泣き虫のぼくは、くろさわくんにいじめられていつも泣いています。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。