その10『ぼくが立たされたわけ』--ユーモア童話か妄想童話か
『ぼくが立たされたわけ』(岡田 淳・作 宮本忠夫・絵 佼成出版社 1989年)
今回は岡田淳さんの『ぼくが立たされたわけ』です。「立たされたわけを知りたかったら、この本を読んでみて!」と表紙が誘っているのですから、読みたくなりますよねえ。タイトルにするぐらいなので、その「わけ」には自信があるはず。みなさんも、そう思いませんか?
◆目の前が真っ暗になる
主人公は2年3組のきしくんです。きしくんが担任のひめだ先生に頼まれごとをされるところから物語が始まります。
音楽のおにづか先生のところへ行ってタクトを借りてきてほしいと言われたとたん、きしくんは目の前が真っ暗になりました。相手は怖い先生です。きしくんは、おにづか先生のことを「ぜったいに まじょだ」(P6)と思っているんですね。ほんとは行きたくなかったのですが、大好きなひめだ先生の頼みには弱いので、断れませんでした。
音楽室は3階です。1階にある3組の教室を出たとたん、きしくんの妄想が始まります。階段を上りながら、どんどん妄想が膨らんでいきます。どんどんどんどん膨らんだ妄想は、もう止まりません。ついには、とんでもないことをしてしまいます。
(次のページに続く)