幼年童話の書き方22~第2部「名作に学ぶ」その10

その10『ぼくが立たされたわけ』--ユーモア童話か妄想童話か ぼくが立たされたわけ(岡田 淳・作 宮本忠夫・絵 佼成出版社 1989年)

今回は岡田淳さんの『ぼくが立たされたわけ』です。「立たされたわけを知りたかったら、この本を読んでみて!」と表紙が誘っているのですから、読みたくなりますよねえ。タイトルにするぐらいなので、その「わけ」には自信があるはず。みなさんも、そう思いませんか?

目の前が真っ暗になる
主人公は2年3組のきしくんです。きしくんが担任のひめだ先生に頼まれごとをされるところから物語が始まります。

音楽のおにづか先生のところへ行ってタクトを借りてきてほしいと言われたとたん、きしくんは目の前が真っ暗になりました。相手は怖い先生です。きしくんは、おにづか先生のことを「ぜったいに まじょだ」(P6)と思っているんですね。ほんとは行きたくなかったのですが、大好きなひめだ先生の頼みには弱いので、断れませんでした。

音楽室は3階です。1階にある3組の教室を出たとたん、きしくんの妄想が始まります。階段を上りながら、どんどん妄想が膨らんでいきます。どんどんどんどん膨らんだ妄想は、もう止まりません。ついには、とんでもないことをしてしまいます。
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。