幼年童話の書き方23~第2部「名作に学ぶ」その11

その11『まほうつかいのいるがっこう』--この本を読んだらきっと
(川村たかし・さく 赤星亮衛・え   PHP研究所・1981年)

魔法がかかったように

作者の川村たかし先生は、わたしがお世話になった同人誌『亜空間』の主宰者ですが、小学校・中学校・高校・定時制高校・大学での教員経験があるすごい先生です。奥付の紹介によると、この『まほうつかいのいるがっこう』を書いたころは奈良教育大学の非常勤講師(後に梅花女子大学教授)をされていたようです。

『まほうつかいのいるがっこう』の主人公は、2年生のるみちゃんです。
るみちゃんは学校が怖くて、家を出るとしゃべれなくなります。そして、学校の前まで行くと足が止まってしまいます。給食はひとりで食べられません。トイレもひとりで行けません。魔法がかかったように体が動かなくなってしまうのです。そんなるみちゃんを支えているのが、クラスでいちばん力持ちのとんちゃんと担任のよっこせんせいです。

ある日、るみちゃんのクラスがお昼の学校放送に出ることになりました。「うりこひめ」の劇を録音して給食の時間に流すのです。るみちゃんはウサギの役になりました。入学してから学校では一度もしゃべったことがないのにセリフがあります。
家でなんども練習をしたので、教室で録音したときには小さな声が出ました。でも、聞こえなかった子がいたので、最初から録り直すことに。やり直しに文句を言う子はいません。みんなが見守る中、5回目でやっと全員に聞こえる声が出ました。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。