『おいもさんがね‥』
とよたかずひこ さく・え
童心社
2012年6月刊
❖思わずお腹が鳴りそう
物置を整理していたとき、一冊の黄色い絵本がひょっこり顔を出しました。少しだけ色あせ、角がすり減った背表紙は、私の記憶の扉をそっと開けてくれるようでした。それは、とよたかずひこさんの『おいもさんがね・・』。
この絵本のストーリーは、一見とてもシンプルです。でもページをめくるたびに、じわじわと“ぬくもり”が広がってくるような、そんな不思議な力を持っています。おいもたちがユーモラスに動き回る姿は、あまりに愛らしくて、何度読んでも飽きません。子どもと一緒に声を出して読むと、絵とことばがぴったり重なって、まるでおいもさん達が目の前で動き出したかのような感覚になったのを思いだします。
特に印象的なのは、おいもたちの色づかい。温かい皮の紫色、ホクホクとした黄色。まるで本物のさつまいもを手に取っているようなリアルさがあって、見ているだけで思わずお腹が鳴りそうになります。
絵本の中なのに、おいもさんが水に入った時の冷たさ、そして火に入った時のあたたかさまで伝わってくるようで、色の力、絵の力ってこんなにも感覚に働きかけるのだと、改めて感動しています。
(次のページに続く)