第3回犬の日特集⑤

犬にまつわるショートストーリーをお届けします。
宇都宮みどりさんの作品(作・絵)です。

はずかしがりやの小太郎

小太郎は、山田さんちの6さいになるミニチュアダックスフンドです。
山田さんちにはお父さん、お母さん、そして小学2年生の花菜ちゃんがいます。

小太郎の友だちは、花菜の部屋の大きなクマのぬいぐるみ。
「クマくん。今日はね、ぼくのおたん生日だったんだよ」
「そうだったんだね。おめでとう」
「ありがとう。ケーキを買って、みんなでおいわいしてくれたんだ。ぼくの顔がかざってあったスペシャルケーキ、君にも見せたかったなあ」

「そのケーキ、ぼくも見たかったよ。食べられるもんなら食べてもみたかったな」
「そういえば、クマくんのおたん生日はいつ? おいわいしてもらったことある?」
「ぼくの誕生日? ん〜、いつなんだろう。花菜ちゃんちに来た日だったら10月10日だよ。だけど、ぼく、おいわいなんてしてもらったことないや」

「花菜ちゃんが、君のたん生日をわすれてても、ぼくが10月10日になったら『おめでとう!』って言ってあげるね。だって『おめでとう!』って言われるの、とってもうれしいんだもん。その気持ち、君にも知ってほしいからね」
「うれしいなあ。早くその日が来ないかなあ」
クマくんとは、こんなにおしゃべりできる小太郎ですが、外に出ると、はずかしくて、だれとも話ができません。