その2『しょうぶだ しょうぶ!』--わたしがネタを拾うのは

(野村一秋・作 ささきみお・絵 文研出版・2004年)
◆家族で食卓を囲んで
小学校に20年も勤めていたんだから、作品のネタはいっぱいあるんじゃないかと聞かれることがあるのですが、自分が関わったエピソードは事の顛末を知っているだけに話が膨らみません。
わたしがよくネタを拾ったのは家族の会話です。毎晩、家族で食卓を囲んで、二人の子どもと教員だった妻が、きょうはこんなことがあったと語り合うのを聞きながら、ネタ探しをしていました。
わたしがネタとして拾うのは、「こんなことがあった」の一言だけです。詳しくは聞きません。この一言から話を作っていきます。今回紹介する『しょうぶだ しょうぶ! -先生VSぼく-』も、そうしてできた本です。ある日のこと、妻が、「きょう、男の子が担任の先生のことを『あいつ、うるせえんだよな』と、つぶやいていたんだよね」と。
子どもたちに怒鳴る先生がいます。特に若い男の先生に多いでしょうか。子どもたちを静かにさせるには怒鳴るのが手っ取り早いので、経験の浅い先生ほどよく怒鳴ります。じつは、わたしもそうでした。
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