幼年童話の書き方27~第3部「自作を語る」その3

その3『ミルクが、にゅういんしたって?!』--先生も嘘をつく

小学低学年向け創作童話『ミルクが、にゅういんしたって?!』の表紙画像
(野村一秋・作 ももろ・絵   くもん出版・2004年)

ネタにしたのは

今回紹介する『ミルクが、にゅういんしたって?!』も、前回の『しょうぶだ しょうぶ! ―先生VSぼく―』と同様、ネタは妻の一言でした。

ある日の夕食時に妻が、「きょう、Nちゃんが、教室で飼っていたハムスターが死んじゃったのに、入院したって嘘ついちゃったんだよね。だいじょうぶかなあ」と。Nちゃんというのは、妻といっしょに特別支援学級の担任をしていた若い女の先生です。
すかさず「それ、いただきっ!」と言いましたが、このときも詳しいことは聞きませんでした。ネタにしたのは、先生の「ハムスターが入院した」という嘘だけです。

この本の主人公は、なっちゃんです。みんなの前では思っていることが言えず、休み時間はひとり教室で本を読んでいる、2年生の女の子です。
なっちゃんの隣の席のしんちゃんは新学期、教室で飼っているハムスターのミルクの世話係になって、毎日、休み時間もミルクにつきっきりで世話をしていました。なっちゃんは、そんなしんちゃんを応援していたのですが。

ある日、ミルクがエサを食べなくなり、担任のさよこ先生が病院へ連れていくことになったのですが、なっちゃんは、その日の夕方、先生が体育館の裏でミルクを土に埋めて手を合わせているのを見てしまいました

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。