でも・・・3日後にまた、ドロがやってきたのだ。夜の1時もとっくにすぎたころに。
ボクは、サロンのソファーの上でねむっていた。気配を感じて目をあけると、ろうかにともされた小さなでんとうの下を黒いかげがとおりすぎた。やがてボクの食べのこしをガツガツと食べている音がかすかにきこえてきたのだ。
そのとき・・・おや?
あのきらきら星のヴァイオリンが、しずまりかえった深夜にひびいてきたのだ。
ガツガツはぴたりととまった。ドロのうなり声をきいたような気がした。そして、ゲーゲーはきちらす音までが。
やれやれ、また、りつ子さんにしかられるのはボクなんだ。そして「ジロをじゅういさんに一度みせたほうがいかしら」って思うかもしれない。
ヴァイオリンはまだなっている。夫婦のしんしつは2かいにある。ステファノがねている小さな部屋のとなりなのにきこえないのかな。
なんと、おとなりのおじいちゃんの方が先に目をさましてしまったのだ。
「うるさい! こぞう、ポリスを呼ぶぞ!」
おじいちゃんがどなっている。やっとりつ子さんが目をさましたようだ。けたたましい足音。
「ステファノ、どうしたのよっ! 真夜中の2時っていうのに!」
「ごめんね、りつ子おばちゃん。自分でもさっぱりわからないの」
「アーティストには時間の観念がないのだ。ステファノは世界的なヴァイオリニストになるぞ!」
チェーザレ氏が大あくびをしながらさけんでいる。
ジロとドロとヴァイオリン(6/7)
文と絵・すむらけんじ