ボクらが食べ終わった頃、別のエプロンの男がもっと大きな皿を持って出てきた。
「さあ、すっごいごちそうだぞ。チョウザメの白ワインむしだ。お前たちは今日はまったくついてるよ。わがままなお客さんが半分も残してくれたんだからな」
こはんに面しているテーブルはお客さんでいっぱいだ。
日がくれかかっていて、色とりどりの豆ランプでまるでお祭りのよう。
眠くなったボクは一番はしっこの、客が去っていったばかりのテーブルの椅子の上にうずくまると、そのまま寝てしまったのだった。
・・・誰かがボクを呼んでいる。
子どもが笑っている。この子、誰だっけ。
ボクをやさしく抱いてくれるこの子どもはアンジェロ(天使)かな?
白い羽はつけていないけど、清らかでとっても可愛いんだ。
子どもがボクに ささやいている。
ボクと君は友だちだよ、これからもずーっとずーっとね、いつもいっしょなんだよ・・・・
「おい、ミーチョ(子ネコ)、ここはお客さんの席だよ。さっさと椅子からおりてくんな」
給仕の男がボクをおいはらおうとしていた。
「ねかせておきなさいな。椅子は四つ。お客は私と妹と二人っきりなのよ」
きかざった2人の老女は笑いながら席についた。それからテーブルクロースをそっとたくし上げて、のぞきこむようにボクを見た。
「丸いオレンジ色の目がすてきね。ちっとも人間をこわがらない猫なんてすばらしいわ」
「どれどれ、私も見たいわ。ほんとね。とっても人なつっこい感じだわ。あんたが欲しがっていたタイプね、きっと」
「リンリンがいなければこの猫ちゃんつれて帰りたいところよ」
「2ひきいたっていいじゃあないの。いいお友だちになれるかもしれないわ」
給仕が料理をはこんで来たとき、老婦人は言った。
「小さなお皿を1枚持って来てくれないかしら。あたしたちのお客さまのためにね」