『きみは太陽のようにきれいだよ』
チェマ・エラス 文
ロサ・オサナ 絵
福原麻希 訳
童話屋
絵本の世界に触れる時間は、私たち大人にも、とても大切だと思うことがよくあります。心を癒せる時間になるとともに、大人である自分ゆえに気が付けることがたくさんあります。同じ作品でも、幼い頃読んで子供として感じた時、子育て真っ最中だった若い母親だった頃に読み聞かせた時、そして子育てがほぼ卒業し枯れ始めた世代(?)になった今は、また読み方が違います。
年齢や人生を重ねて読むと、以前は気がつかなかった深い意味合いやメッセージを読み解け感動するし、忙しい暮らしでは忘れている子供の心をまだもちつづけている自分に、ちょっと嬉しくなったりすることもあります。
「絵本や童話の世界が必要なのは、私たち大人も!」と言うことで、私のレビューは、むしろ大人向け、という視点でもご紹介させていただこうと思ってます。
私が20代の学生でスペインに留学中だった時、向かいのアパートに住んでいたアメリカ人男性と知り合いました。最初に会った時に本の話をした彼はやがて夫となり、今年は知り合って30年。作家でもある夫はもちろん「本の虫」で、 同じ本を一緒に読んだり、文学論議(と呼ぶ夫婦喧嘩)もたくさんしてきました。今日は、この文章を、30年記念の旅行先、米国ユタ州の図書館で綴っています。「本」は私たち夫婦のキーワードなので、旅先の図書館巡りをしています。
前置きが長くなってきましたが、今日はスペインの作家、チェマ・エラスによる素敵な老年夫婦のお話を紹介します。
お腹もぽってりしてるおじいちゃん、村の広場で今宵行われる、有名な音楽家の演奏によるFiesta(ダンスパーティ)に誘います。自分の老いや容姿に遠慮をし、編み物しつづけているおばあちゃんに、「君は太陽のようにきれいだよ」などと、詩的でほろりとする言葉で口説きつづけます(ラテンっぽくて熱いお誘い!)。
同じくスペイン人画家ロサ・オスナによるパステル調のやさしい絵柄で綴られる話の中には、ふたりの辿ってきた軌跡がモノクロイラストでちりばめられていて、絵本を読み終わる頃には、言葉の大切さを思い出させてくれます。熱意をもって語ること、優しい言葉をかけることが人の心を動かすのでしたね。特に長年連れ添ってくる夫婦間となると、つい忘れてしまっているのですが、ちょっとだけでも心のポケットに忍ばせておこうと思います。
50代半ばの私たち夫婦は、これから先数十年の夫婦のあり方を考えてみる時期なのでしょう。そんな機会でもある30年記念旅行に、この絵本を持って来て、素敵なスペインの老夫婦の話を読み返しました。夫にも読んでもらおうかな? 若いカップルにも、熟年のカップルにも、ぜひおすすめの大人向けの絵本です。